技術説明

プラスチックの成形について

もともと英語で「柔軟に形を変えられる」という意味をもつプラスチック(plastic)は、強く、軽く、腐らず、衛生的で加工しやすく、大量生産も可能なことから、私たちの身の回りで多く使われております。

また、熱を加えると簡単に形を変えられるため、リサイクルが容易で環境負荷の低減するという観点から今後もそのニーズは増えていくとされております。代表的には、食品容器や袋をはじめ、自動車部品、スマホ、携帯ゲーム、など限りありません。

光産業ではそれらプラスチック製品を設計開発から成形・加工と一貫して行っており、ここではそのうちの代表的なプラスチックをご紹介いたします。

プラスチックについて   樹脂材料から選ぶ
製品の設計について   射出成形における不良と対策
プラスチックとは?

JIS規格では、「高分子物質を主原料として人工的に有用な形状に形作られた固体である。ただし、繊維・ゴム・塗料・接着剤などは除外される。(JIS K 6900)」と定義されています。

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プラスチックの作られ方

まず、プラスチックの主原料の原油を、蒸留しナフサを取り出します。さらにそれを分留してエチレンやプロピレンなどの合成樹脂や石油化学製品の基礎原料を取り出します。
そして、それをまた他分子と結合・重合などすることで多様なプラスチックを生産します。と、何段階もの工程を経て、プラスチック材料が作られています。

また、現在では、石油以外(穀物でん粉など)を原料にしたプラスチックも量産されています。

クッキーとチョコレート

プラスチックは【熱可塑性樹脂】と【熱硬化性樹脂】に大別されます。光産業では熱可塑性樹脂の成形加工を得意としています。この熱可塑性樹脂はチョコレートの様に溶かせば何度でも形を変えることができます。
熱硬化性樹脂は、クッキーのように熱を加えると硬化し、再度溶融して使用することができない性質を持っています。熱に強く灰皿などに使用されています。

※可塑とは固体に熱などの外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質のこと

光産業で使われるプラスチック一覧

下記に、加工可能なプラスチックの紹介と簡単な解説を掲載しました。

熱可塑性樹脂 樹脂名 耐熱温度(℃) 用途
高密度ポリエチレン
HDPE
90〜110 理化学容器・キャップ
低密度ポリエチレン
LDPE
70〜90 プラスチック容器用中栓
ポリプロピレン
PP
100〜140 生活雑貨・弁当箱・哺乳瓶
ポリスチレン
PS
70〜90 透明ケース(廉価)
AS樹脂
AS
80〜100 透明容器(要強度)
ABS樹脂
ABS
70〜100 電気製品・民生用電気製品(弱電分野)
ポリアセタール
POM
80〜110 機構部品・ダーツの針
ポリブチレンテレフタレートPBT 210 電子部品・工業用電気機器(重電分野)
アクリル
PMMA
70〜90 キーホルダー・はんこの握り
ポリカーボネート
PC
120〜130 波板・建築部材
ナイロン
PA
80〜180 結束バンド・機構部品

この他にも、FRP(繊維強化プラスチック)といって、ガラスやカーボンなどの繊維をプラスチックに混入したグレードも存在します。
安価・軽量で耐久性がよいことから、小型船舶の船体や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器に多く使用されています。

光産業では、ガラスによる繊維強化プラスチック(GFRP)の成形も行っております。(≦GF15%)

プラスチック製品の設計方法

プラスチック成形をする場合には数多くの留意点があり、これらを網羅的に把握した上で設計をする必要があります。ここでは、その留意点を設計プロセスごとにご紹介いたします。

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製品企画

まずは、作りたい製品のスケッチや構想を練ります。(こんな物が有ったら便利だなぁ。など)
この段階では、金型からの離型方法や材料コストなどは検討しません。制約なしに自由な発想の中でアイディアを出します。

構造設計

製品の図面を作成します。基本的にはCADを用いて設計していきます。
その際の一番の注意点は勘合部です。たとえば、Φ10の穴にΦ10の棒は入りません。
Φ10の穴に棒を差し込む際は、棒をΦ9.8〜Φ9.9等のように少し小さく設計します。

また、金型から離型しない構造では製品は作れないので、離型方法も考慮しながら設計します。

抜き方向を考慮しないと、スライド機構が余計に必要になってしまったり、冷却機構が難しくなったりするため、金型コスト増や成形品の寸法不適合や外観不良を招きます。

材料選定

プラスチックには多くの種類が存在しますが、それぞれコスト優位性・耐衝撃性・耐薬品性・耐熱性・難燃性・透明性・耐候性など多くの優れた特徴を持っています。
しかし、すべての特徴を兼ね備えたプラスチックは存在しないため、製品のコンセプトにあった機能の取捨選択をしなくてはなりません。

・アクリルとスチロールを比較した場合、コスト優位性はスチロールにありますが、透明性を求める場合はアクリルに敵うプラスチックは存在しません。
・基本的にプラスチックは絶縁物ですが、大きな電圧がかかった場合に、絶縁破壊という現象が発生します。電気絶縁性を考慮しなければならないのでPBTを使用しなければなりません。

以上のように、材料の特性を考慮しながら製品を考えなければなりません。
そして、ここまでが製品の設計となります。

金型製作

ここからは、実際に製作という工程になっていきます。金型を製作する際も留意点があります。
製品を寸法・外観ともに効率よく安定して作らなければなりません。
そのためには、プラスチックの収縮率・成形品の抜け勾配・パーティング面・冷却構造・ゲート位置及び構造・取数などさまざまな検討をしなければなりません。

製品単価を安くしようとする場合は、ピンゲートといわれる構造でなおかつ多数個取を検討します。
しかし、肉厚のアクリルなどは流動性が悪く高圧で成形する必要があるため多数個取もできません。また、取数は金型のコストと比例するため、製品ごとに最適な妥結点を検討します。

成形

良好な金型を製作できたらいよいよ成形です。
成形もコストを考えると、ハイサイクルが理想ですが必ずしもハイサイクル成形ができるとは限りません。

流動性の良いプラスチックは充填スピードを早くすると同時に、金型温度を低く維持し冷却時間を短くすることができますが、アクリルやポリカーボネートなど流動性の悪いプラスチックは流動性を良くするために金型の温度を高くしてゆっくりと充填しなければなりません。
それと同時に、金型温度が高いために冷却・固化にかかる時間も増えます。そのため、ハイサイクル成形はできません。

また、プラスチックには親油性プラスチック・親水性プラスチックがありポリエチレンなどのオレフィン系樹脂は乾燥を必要としませんが、ナイロンに代表される水を含みやすい樹脂は予備乾燥が必要になります。

乾燥温度・乾燥時間もプラスチックの種類によって異なり、場合によっては設備も変更しなければなりません。

これらは検討事項の一部に過ぎません。光産業では、開発から成形までを一貫して支援・提供いたします。ぜひ一度、ご相談ください。

 

射出成形に発生する不良と対策について

プラスチック成形では、それぞれの材料の特性を十分理解した熟練作業員が、不良の原因とそれに合った対策を講じなければ良好な成形品を作れません。弊社では射出成形に関して、マニュアルを作成し成形品の不良と対策を行っております。

作業員のレベルに関わらず誰でも良好な製品を作れるように日々改善を行っております。
無論のこと、成形品の不良対策を施した場合には熟練作業員が最終確認を致します。
以下に、代表的な成形上の不良とその対策方法を紹介いたします。

代表的な成形不良現象一覧

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不良現象:バリ(パーティングに樹脂が流れ込む現象)
型締圧が射出圧より低い

【原因】

   
  • 1:射出圧力が高い
  • 2:型締力が不足している
  • 3:材料供給量が多い
  • 4:樹脂温度が高い
  • 5:射出圧力保持が長い
  • 6:射出速度が早い
     
   
  • 1:金型の芯が合っていない、パーティングライン不良
  • 2:金型プレート間に異物が附着している
     
   
  • 1:流動性が良過ぎる

【対策】

   
  • 1:圧力を適当にする
  • 2:型締力を上げる
  • 3:適正な供給量にする
  • 4:シリンダー温度を適温にする
  • 5:圧力保持時間を適正にする
  • 6:射出速度を遅くする
     
   
  • 1:パーティングを厳密に合わせる
  • 2:金型を掃除する
     
   
  • 1:材料に合った適正な成形条件をとる
不良現象:ショートモールド(材料不足により不完全形状の成形物を生ずる現象)
成形材料が完全充填されないで冷却固化してしまう

【原因】

   
  • 1:供給材料の不足
  • 2:射出圧不足
  • 3:金型温度の低過ぎ
  • 4:材料供給不良・ホッパー内での落下不良・スクリューへの喰い込み不良
     
   
  • 1:スプルー、ランナー、ゲートにおける抵抗大
  • 2:キャビティの流動抵抗大
  • 3:ガス抜け不良
     
   
  • 1:材料の流動性不良

【対策】

   
  • 1:材料供給量を適量にする
  • 2:射出圧を上げる
  • 3:金型温度を上げる
  • 4:ホッパー下部にブリッジが発生しないよう注意する シリンダー温度の勾配を適温にする
     
   
  • 1:スプルー、ランナー、ゲートの断面積を増やすか、長さを短くする もしくは表面仕上げを滑らかにする
  • 2:ゲートの位置を変える もしくは材料の流動が良くなるように形状厚みを変える
     
   
  • 1:シリンダー温度を上げる、サイクルを長くする、射出速度を上げる もしくは流動性の良い材料にする
不良現象:ヒケ(成形物表面に凹み変形を生ずる現象)
溶融材料はキャビティ内で冷却され体積収縮をおこすが、その際収縮分に相当する材料がしっかり保圧充填されていないため起こる
もしくは冷却時の収縮が不均一になっているために起こる

【原因】

   
  • 1:キャビティ内への材料充填圧不足
  • 2:材料供給量不足
  • 3:成形材料の冷却固化時の体積収縮が過大
  • 4:金型温度の低すぎ、または高すぎ
  • 5:冷却不足
     
   
  • 1:ゲート、スプルー、ランナーの細過ぎ
  • 2:ゲートの位置不良
  • 3:ゲートの大き過ぎ(キャビティより溶融材料の逆流出)

【対策】

   
  • 1:射出圧もしくは保圧を上げる
  • 2:材料供給量を適量にする
  • 3:シリンダーの温度を下げる
  • 4:金型温度を適温にする
  • 5:金型温度の低下または冷却時間を延長する
     
   
  • 1:ゲート、スプルー、ランナーを広げる
  • 2:成形物の肉厚の変化のある場合は肉厚部にゲートをつけるようにする
  • 3:ゲートを適正にする(逆流を防ぐため、背圧を上げ、計量時間を長くする)
不良現象:シルバーストリーク(材料の流動方向に銀白色の条痕が現れる現象)
材料の揮発分がキャビティ内部へ樹脂と共に射出された時に発生する軌跡

【原因】

   
  • 1:成形材料の一部が熱分解し、揮発性物質を生ずる
  • 2:材料の可塑化不足
  • 3:射出速度が速すぎる
  • 4:射出圧力の不足
  • 5:スクリューにエアーを巻き込む
  • 6:金型温度が低すぎる
     
   
  • 1:エアー抜き(ガス抜き)が悪い
  • 2:ゲートの位置が不適
  • 3:ゲート、ランナー、スプルーが過小
     
   
  • 1:材料の水分、その他揮発分の気化
  • 2:金型面の水また離型剤の付着
  • 3:スリッパーの混入量が多過ぎる

【対策】

   
  • 1:ショートショットに注意しながらシリンダー温度を下げる、もしくはサイクルの短縮
  • 2:可塑化を良くする
  • 3:射出速度を落とす
  • 4:射出圧力を上げる
  • 5:背圧を上げる
  • 6:金型温度を上げる
     
   
  • 1:ガス抜きをつくる
  • 2:ゲートの位置を再検証し、適所にする
  • 3:ゲート、ランナー、スプルーを大きくする
     
   
  • 1:材料を充分乾燥する
  • 2:キャビティ面をよくふき、水、離型剤をのぞく
  • 3:スリッパーの混入量を適量にする
不良現象:フローマーク(成形品の表面にゲートを中心として発生する年輪状の縞)
金型に樹脂を無理に流し込むために表面に流れの方向と直角に細い褶曲を生ずる

【原因】

   
  • 1:樹脂温度が低い
  • 2:射出速度が遅い
  • 3:射出保持圧が不足
  • 4:保圧時間が短い
  • 5:ノズル過少
     
   
  • 1:金型温度が低い
  • 2:金型の冷却が不適
  • 3:ゲート寸法が不適
     
   
  • 1:材料の流動性不良

【対策】

   
  • 1:シリンダー温度を上げる
  • 2:低速で射出する
  • 3:保持圧を高くする
  • 4:保圧時間を長くする
  • 5:ノズルを大きくする
     
   
  • 1:金型温度を高くする
  • 2:均一な冷却方法をとる
  • 3:ゲート寸法を適正にする
     
   
  • 1:適当な品種をえらぶ、グレードの再検討
不良現象:ウェルドライン(成形物表面に生じた成形材料の融着不良現象)
成形材料がキャビティ内を分岐したのち再び合流するとき材料温度が低下して完全に融合せず融着不良となる

【原因】

   
  • 1:射出圧の不足
  • 2:溶融材料のキャビティ内での冷えすぎ
     
   
  • 1:スプルー、ランナー、ゲートにおける流動抵抗が大きい
  • 2:キャビティ内の空気抜き不良
  • 3:成形材料のキャビティ内での分流再会合のため起きる(ゲート位置不良叉はキャビティ形状不良)
     
   
  • 1:溶融材料の流動性不良
  • 2:潤滑剤、離型剤の使用過多

【対策】

   
  • 1:射出圧を上げる
  • 2:金型温度を上げる
     
   
  • 1:スプルー、ランナー、ゲートの断面積を大きくするまた長さを短くする、表面仕上げを滑らかにする
  • 2:金型に充分な空気抜きをつける
  • 3−1:ゲートの位置を変える
  • 3−2:キャビティの構造を分流、再会合のないように変える
  • 3−3:ランナーの屈曲部のところに過冷材料の溜り(コールドスラッグウエル)を設ける
     
   
  • 1:シリンダー温度を上げる、サイクルを長くする、流れの良い材料に変える
  • 2:潤滑剤、離型剤の使用量を適当にする
不良現象:ボイド(成形品の樹脂内部が収縮して真空の空隙を生じる現象)
肉厚部分の表面が先に固化し収縮できない場合に、内部に真空気泡が発生する

【原因】

   
  • 1:射出圧もしくは保圧の不足
  • 2:金型温度が低すぎる
  • 3:射出温度が高すぎる
     
   
  • 1:ゲート位置が不適切
  • 2:肉厚が厚すぎる
     
   
  • 1:材料の水分、その他揮発分の気化

【対策】

   
  • 1:射出圧もしくは保圧を上げる
  • 2:金型温度を上げる
  • 3:射出温度を下げる
     
   
  • 1:ゲート位置を見直し、肉厚部に直角に射出するように修正する
  • 2:偏肉をなくし、肉厚を薄くできる場合には薄くする
     
   
  • 1:材料の予備乾燥を十分に行う